2018年 11月 26日
Queen - I Was Born To Love You - 2004 Video |
映画「ボヘミアン・ラプソディ」のサントラには入っていませんが、この曲は日本でCMに使われていたので、みんな聞いたことがあるのではないでしょうか? フレディ、とにかく歌がいい、声が伸びる、好き嫌いをいう前にこの人は歌が上手いと誰もが認めざるを得ない歌唱力をもった歌手です。
クイーンですが、デビュー当時はロックバンドとしては色物扱いというか、ゲテモノ視されていたところがありました。日本でも十代の女の子には大人気でしたが、おれこそほんもののロックファン的男子には(たぶん女子がキャーキャーいってるせいもあってか)、距離を置かれていた。
クイーンの楽曲ですが、演奏しているのは典型的なロックバンド形態の楽隊なんですけれども、曲の味付けや趣向は「おれたちロックだから」ということにとらわれず、使えそうなもの、おもしろそうなもの、好いものを貪欲に取り入れてクイーン流に料理してしてしまう、曲の芯になる親しみやすいメロディーとフレディの圧倒的歌唱力で、どーんと聞き手に届かせてしまうパワーがありますね。このあたりは、ロックというよりは日本の歌謡曲に近い、雑駁にして生命力溢れた大衆文化の強さを感じます。
映画では、「ボヘミアン・ラプソディ」はシングル曲として長すぎるから出せないというプロデューサーに、ドナ・サマーの「マッカーサー・パーク」は同じくらいの長さなのに大ヒットしたじゃないかと反論する場面がありました。
(追記:2019-01-27 ドナ・サマー「マッカーサー・パーク」はリチャード・ハリスの歌のカヴァーだそうで、この映画で言及されていたのはリチャード・ハリスの歌の方ではないか、という説あり)
当時、ディスコが流行って、ドナ・サマーはそこから大ヒットを出していた歌手でしたが、彼女も歌唱力はともかく歌手としてはディスコなせいでゲテモノ感がありましたし、そのころのディスコ文化というのは、ゲイのナイトクラブから育ったもので、「マッカーサー・パーク」とかの一連のドナ・サマーのヒット曲は、とにかくゴージャス、ラージャー・ザン・ライフ、オーバー・ザ・トップなきらびやかさが溢れかえりながら、ディスコな儚さのせいでそんなに暑苦しくはならないという、たぶんゲイテイストが咲かせたものだった。そしてそれに共通するテイストがクイーンの楽曲にもあったのかもしれない。フレディがクイーンに持ち込んだものになるのだが、他の3人のメンバーはフレディの個性をおもしろいねといって許容し、それを自分たちが作る音楽に活かすことができる、懐の深い人たちだったのだ、幸運にも。
映画ですが、史実と時系列があってないとか細かいことに文句つけてる批評もありましたが、てきぱきとバンドの成り立ちとフレディの人間像を示し、クライマックスとなるライブエイドの場面へとなだれ込んでいく流れは見事でした。劇映画としてはあれでいい。また、今回の映画、おそらくライブエイドをどこまで臨場感もたせて観客に体験させられるかというのが課題になっていて、それは十二分に達成されています。
長年のファンとしては、昔写真や映像で見たメンバーの姿や振る舞いがところどころ完コピ的に再現されて出てくるのが、マニア心をくすぐりますし、クイーンにまつわるあれこれがさりげなく画面に現れる楽しさ、フレディの夜の生活も、大人であれば見ればわかるように上手に描かれていて、このあたりは大昔のハリウッド映画の描写方法を連想させられてた。ああいう技もあるんですよ。淀川先生の「昔は映画が大人でしたねえ」ということばを思い出しました。
by nesskoDiary
| 2018-11-26 10:20
| 音楽
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