2022年 11月 26日
15時17分、パリ行き ( The 15:17 to Paris ) |
Amazon Prime Video で視聴。
2018年、アメリカ; 監督:クリント・イーストウッド; 主演:アンソニー・サドラー、アレク・スカラトス、スペンサー・ストーン
2015年にヨーロッパの高速列車内で起こった「タリス銃乱射事件」を描く。
アンソニー、アレク、スペンサーは中学校で知り合い、進路が分かれた後も友人として交流が続いていた。2015年、三人はヨーロッパに旅行し、アムステルダムからパリへ向かう高速列車タリスに乗るが、その列車には無差別テロを企む男も乗車していた。……
「タリス銃乱射事件」で犯人を取り押さえた3人のアメリカ人男性を、当事者がそのまま演じる実録もの。再現ドラマといったほうがいいのか。冒頭、列車に乗り込む男の足下がとらえられ、高速列車内で起きる事件を予感させる。その後、主役となる三人の生い立ち、彼らのヨーロッパ旅行の様子が描かれますが、ドラマの山場となる車内テロを予告するように、合間合間に事件の場面が挟み込まれ、緊張感を伴って流れが進みます。
再現ドラマ的にするためか、BGMがほとんど流れない、イタリアの観光地の広場とかアムステルダムのクラブとか、音楽がそこで鳴っている場所ではそこで聞こえるだろう音楽が流れますが、あとはほとんど自然音だけ。しかし、この映画、その自然音がすごくよく効いてます。
大団円ともいえる場面、フランス大統領が乗客を守った三人(ともう一人)を讃える場面、勲章授与の式典の前に、ひかえめに音楽が入ってきますが、これ、現実にあった場面にそうすることで、この映画自体が三人を讃えている、そういう風に見える仕立てになってました。イーストウッド、さすが、というか、ウッディ・アレンに負けず劣らず、イーストウッドも音楽の使い方うまいんですよ。ジャズにくわしいそうだし。
英語が主流で、最後にフランス大統領のスピーチが聞けるので、英語やフランス語学習中の人にはお勧め。合間にドイツ語やオランダ語、イタリア語なんかも聞けるでしょう。
さて、「テロとの戦い」ですが、アメリカがそれを旗印にアフガニスタンやイラクでしたことの負の側面は大きいし、シリアのアサド政権や、中国、ロシアなどは、「テロとの戦い」を自分たちの正当性を語る際にしばしば用いています。新聞で国際面読むだけでもそういうことが起きているのは分かります。
なので、この映画は、三人の、とくに一本気だけど不器用なスペンサーが、訓練をまじめに積んで「人の命を助ける人」になった成長譚として観られますけれども、おそらく日本で見る劇映画にはあまり登場することがなさそうな、テロに赴く側の人たちの世界がある、そういうことは、映画じゃなく新聞読んで、頭の隅に入れておきたいなと思ったりしました。
by nesskoDiary
| 2022-11-26 14:56
| 映画
|
Comments(2)
弊記事へのコメント有難うございました。
>当事者がそのまま演じる実録もの。再現ドラマといったほうがいいのか。
現在の欧米映画は、実話ものが跋扈して、作り物を愛する僕を嘆かせていますが、その中でも、珍しいほど再現ドラマ性の高い作品でしたね
「アンビリバボー」のような再現ドラマを扱うTV番組でも本人が演ずることはまずないわけで、非常に珍しい。
しかし、結果が解ってい、かつ、三人の人生行路が平凡すぎる為、大衆映画的な観点では面白いと言いがたい印象がありました。
>一本気だけど不器用なスペンサーが、訓練をまじめに積んで「人の命を助ける人」になった成長譚
この部分は、ぐっと映画的になっていました。脚本家が一番苦心したところだと思います。
映画はこうでなくでは!
>当事者がそのまま演じる実録もの。再現ドラマといったほうがいいのか。
現在の欧米映画は、実話ものが跋扈して、作り物を愛する僕を嘆かせていますが、その中でも、珍しいほど再現ドラマ性の高い作品でしたね
「アンビリバボー」のような再現ドラマを扱うTV番組でも本人が演ずることはまずないわけで、非常に珍しい。
しかし、結果が解ってい、かつ、三人の人生行路が平凡すぎる為、大衆映画的な観点では面白いと言いがたい印象がありました。
>一本気だけど不器用なスペンサーが、訓練をまじめに積んで「人の命を助ける人」になった成長譚
この部分は、ぐっと映画的になっていました。脚本家が一番苦心したところだと思います。
映画はこうでなくでは!
1
Commented
by
nesskoDiary at 2022-11-26 20:39
> オカピーさん
コメントありがとうございます。
どうもイーストウッド監督は、三人がごく普通の若者で、スペンサーが列車に乗る際にお年寄りの荷物を運んであげて、列車内で通路通る時にその人に会ったらあいさつしてる、ああいう日常ふつうに他の人にも親切にする、その延長で、テロ犯を取り押さえて乗客を守ったというのを描きたかったようで、それで主役三人の日常がほんとうにフツーで、ま、劇映画的には淡々としすぎてるんですけど、そこで、冒頭から予告編をちらちら見せるように列車内での事件の断片を挟み込んで全体のリズムを作っていて、そこはうまかったですよ。
コメントありがとうございます。
どうもイーストウッド監督は、三人がごく普通の若者で、スペンサーが列車に乗る際にお年寄りの荷物を運んであげて、列車内で通路通る時にその人に会ったらあいさつしてる、ああいう日常ふつうに他の人にも親切にする、その延長で、テロ犯を取り押さえて乗客を守ったというのを描きたかったようで、それで主役三人の日常がほんとうにフツーで、ま、劇映画的には淡々としすぎてるんですけど、そこで、冒頭から予告編をちらちら見せるように列車内での事件の断片を挟み込んで全体のリズムを作っていて、そこはうまかったですよ。